2009年12月3日木曜日

ことば巡り③

「ことば巡り」も3日目になったので、今日でおしまいにする。

11月29日のNHKラジオ第1。5時台のおしまいは「音に会いたい」。過ぎ去った遠い昔にしばし戻ってみたいというリスナーたちのリクエストに応えて、さまざまな「昔懐かしい音」を聞かせてくれる。この日、二番目のリクエストは、静岡県のT.M.さん(79歳)から届いた点字の手紙。

小4の頃、ラジオから「紀元は二千六百年」という歌が連日のように流れてくる。昭和十五年、1940年は皇紀二千六百年[引用者注:つまり、天皇の御代になってから2600年目の目出度い年]に当たり、日本中が祝賀ムードに包まれていた。「金鵄(きんし)輝く日本の 榮(はえ)ある光身にうけて いまこそ祝へ[祝え]この朝(あした) 紀元は二千六百年 あゝ 一億の胸はなる 」
ところが、戦局の悪化とともに、ひどいインフレに見舞われた庶民のあいだに、替え歌が生まれ、またたくまに広がった。
「あの替え歌をもう一度聞いてみたいものです。」

「金鵄」上がって15銭
栄えある「光」30銭
今こそ来たる この値上げ
紀元は二千六百年
ああ1億の民は泣く

「金鵄」上がって15銭
栄えある「光」30銭
いちばん高い「鵬翼」(ほうよく)が
苦くて辛くて50銭
ああ1億のカネは減る

わたしも、この歌をリクエストされた方の四つ年下。この年、幼稚園の最上級生だったが、久松山下の堀端を行進する提灯行列の記憶が残っている。翌年、発足した国民学校入学後、この奉祝歌も替え歌も歌っていた。

金鵄(きんし)というのは金色のトビのことで、「神武天皇東征」のとき、天皇の持つ弓の先に止まって、その光り輝く金色が賊軍の目をくらませて、勝利に導いた。金鵄勲章はご存じでしょ?
「金鵄」「光」「鵬翼」はすべて当時売られていたタバコの名前。
この奉祝歌と替え歌の詳しい記事が、下記のアドレスにあります。

歌で思い出した。[深夜便のうた」というのがあって、毎回放送される。10月頃から放送されている「昭和浪漫~第2章~」が気に入っている。作詞・作曲:オオガタミズオ、歌:大川栄策。
 
風に追われるように街を歩いてる
痩(や)せた野良犬も見かけなくなった
路地の屋台で聴いた ギター流し歌
そんな風情もまた 消えて行(ゆ)くのですか
小さな手をつないで 夕焼けこやけの道を
歌って帰った昭和は風の中

裸電球点(とも)した小さな駅から
夢を枕にして あの日 町を出た
あれから幾年月 時は流れたけど
あの日の夢はまだ列車の棚の上
貧しかったけれどみんな元気だった
笑顔と一緒に昭和は夢の中

振り向けば人生の旅は半ば過ぎて
歩いて来た道に悔いはないけれど
これからが青春です もうひと花咲かせましょう
思い出つまった昭和は夢の中
昭和は夢の中

今まで好きでもなかったが、この大川栄策はいいと思う。

YouTubeがありましたよ。興味のある方はどうぞ。

ひと頃よく言われた「明治は遠くなりにけり」というフレーズがあったけれど、昭和に郷愁を覚えるのは、やはり、年取ったんですねえ…。
やがて、午前6時。お母さん方が起き出してきて、ラジオを聞きながら休日の朝の食事の準備に取り掛かるのでしょう。
「映画って、ほんとにいいですね」というキャッチフレーズを使った映画評論家がいたが、ラジオって、ほんとにいいですね。

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