2007年6月7日木曜日

発明マニア/米原万里

昨年五月米原万里が亡くなる直前まで、二年半にわたって「サンデー毎日」に掲載された全てを集めたもの。本書の帯の惹句に言う。
「米原万里的、ワンダーランド。/絶筆の連載/究極の温暖化対策から日本人男性の誇りと自信向上計画、イビキ防止器具まで―/この世の、あらゆる難問を解決する119の発明」

すべての発明には、新井八代のイラストがついている。イラストの署名はローマ字でARAIYAYOとある。ARAI/YAYOと読まないで、ARA/IYAYOと読むのでしょうね。むろん、万里ちゃん本人だ。
さて、119もの発明のなかで、どれをご紹介するべきか、迷うけれども、二つの理由で、「2 男女共同参画的便器」をとりあげることにする。

第一は、わが家のかみさんが、便所の掃除をするたびに、こうのたもうからである。「おじいさんが、しつこく言うものだから男性用便器を置いてしまい、トイレが狭くなってしまって……」

本書のこの項の冒頭に紹介されている男性二人の言葉を引用する。

1.「その遠慮会釈のない激辛な論評ゆえにあちこちで恐れられ煙たがられているジャーナリストの日垣隆さん」(と、あの万里ちゃんが書いている):
日本の家庭における父権、夫権の失墜は、西洋式便器の普及にともないアサガオ(=男性専用の小便用便器)が一般家庭から駆逐されたのと軌を一にしている。

2.某テレビ局のTプロデューサー:
そうなんですよねえ、用を足すたびに便座を上げるのが面倒だからさぼると、便座にしぶきがかかって、後で、『いやだ、パパ、汚~い』とか、『もーあなた、何度言ったら分かるの! ちゃんときれいにふいといて下さい』とか嫌みや非難に耐えなくてはならなくなる。辛いですよねえ、肩身が狭いですよねえ。

ごうな曰く「闘いなくして、父権、夫権の確立なし!」

次いで、ソ連邦時代、某テレビ局の三人の男性に通訳として同行した万里さんのソ連での経験談が綴られている。話をはしょって言えば、会議の後、同行「三」人で男性用トイレへ入ったところ、便器の位置が高すぎて、足の短い彼らは機銃掃射をすることあたわず、やむなく大便用の個室に入って用をすませた。
そこで、万里さんは昇降式の男子用便器の発明に取り組むが、女性と同じ姿勢で小の方もすます男性が増えてきているようなのでこの発明を断念するというお話。「それよりも何よりもアサガオが家庭どころか日本国内から姿を消す日も近いのではないか、と敬愛してやまない日垣隆さんに同情を禁じ得ない今日この頃である。」と結んでいる。
なお、わが家の男性用便器はアサガオ型ではなく、縦長型で前面は尿と流れる水が溢れない程度の高さであるから、孫たちはよちよち歩きができるようになった頃から堂々と男らしく用をすますことができたのである。

えッ、なに? 「男女共同参画的便器」を取り上げた二番目の理由ですか?そうそう、忘れていました。わが家の便器自慢の話じゃなかった。 

もうだいぶ以前のことで、どこで見たのか忘れてしまったが、便器の上方にこんな張り紙があった。 

朝顔のそとにもらすな竿の露

なかなかいいじゃありませんか。もうこんな張り紙も不用になったんですかねえ。


ごうなのおすすめ本棚 1


発明マニア


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