2007年5月10日木曜日

〈狐〉の書評

昨年の日記を紹介する。
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2006/07/10(Mon).
〈Cosmo〉で偶然『〈狐〉が選んだ入門書』を見つけた。「山村 修」という著者名があるではないか。ついに〈狐〉が正体を現したのだ!
2004年1月7日に発行された『水曜日は狐の書評 日刊ゲンダイ匿名コラム 狐』の巻末にある植田康夫の「解説」によると、 

1999年5月19日発売(紙面上の日付は翌30日)から2003年7月30日発売(紙面上の日付は翌31日)までの掲載分を時系列で収め、『水曜日は狐の書評』という署名で、ちくま文庫の一冊となった。……(中略)…… 8月以降は、筆者の健康上の理由でコラムは休載となっている。

この「8月以降」が何年なのか、不明だが、たぶん2003年であろう。 
狐こと、山村氏は本書カヴァ―にある略歴によれば、1950年生まれ、慶大仏文卒で、現在は随筆家。なお、本書の発行日は、今日の日付である。
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この人の最初の著書は、
『狐の書評』 本の雑誌社
で所有していたはずだが、いくら書架を探してもみつからない。手元にあるのは、
『野蛮な図書目録』 洋泉社 1996年9月
   『狐の読書快然』  洋泉社 1999年8月
『水曜日は狐の書評』ちくま文庫 2004年1月
の3冊。
日記にも書いているとおり、偶然発行日にでくわした(実際には、その何日か前には、書店に出ていたのであろうが、新聞などの広告も見ておらず、まったくの偶然だった)『〈狐〉が選んだ入門書』に山村修という名前を見たとき、長年あこがれていた人にやっと出会えたという驚きと喜びでいっぱいだった。
この本の「あとがき」にも書かれているが、1981年2月から25年間続いたという書評生活で取り上げた本の数は1000冊に近いのではあるまいか。書評の文章は700~900字くらいだが、どの本も読みたくなる。毎週1回、彼の書評を読むことができる人々がほんとうにうらやましかった。きっと、わたしも毎週とりあげられた本を買って読み、そこそこの読書家になっていたかもしれない。
『水曜日は――』の「まえがき」と、『〈狐〉が選んだ入門書』の「あとがきにかえて」のなかで、
匿名の者は、名前をもたないのだから、まして肉体などはない。これまで、そう思い込んで書いてきた。ところがどうやら悲しくも肉体はあって、それが少しばかり故障を生じ、日刊ゲンダイでの連載は二〇〇三年八月から降板した。いまは狐の巣穴に戻って遊んでいる。

私は――身体的な事情があって、昨日(二〇〇六年三月三十一日)付で早期退職をしたばかりですが――、
と、書いていた村山修は、この年の8月14日、肺ガンで亡くなってしまった。
今年1月、最後の68冊への書評を集めた『書評家〈狐〉の読書遺産』(文春新書)が発刊された。その本のカバーの著者紹介欄に、著書の一つとして挙げられている『禁煙の愉しみ』のタイトルが悲しい。


水曜日は狐の書評 ―日刊ゲンダイ匿名コラム


“狐”が選んだ入門書


書評家〈狐〉の読書遺産

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