2008年12月6日土曜日

鳥取を愛したベネット父子 (3)

加藤恭子『日本を愛した科学者 スタンレー・ベネットの生涯』を読んでみて、流石に『ノンフィクションの書き方』の編著者の作品だと感嘆した。
加藤はこの編著書の中で自分の作品について次のように述べている。
 このスタンレー・ベネットはアメリカ人の解剖学者です。鳥取で生まれ、十三歳でアメリカに渡り、やがて戦争。戦争中はアメリカの海軍士官として日本と戦います。
 ところが、自分が生まれた国である日本と戦うことについて、ひじょうに苦しんだ。そして戦争が終わってからは、日本の解剖学者を自分のところへ次々と呼び寄せて一生懸命に教えたのです。
 彼が亡くなったとき、日本のお弟子さんたちが、先生の伝記を残しておきたいということで、團ジーン先生の伝記(引用者注:『渚の唄―ある女流生物学者の生涯』講談社 1980(昭和55)年を指す)を書いた「あの人」に頼もうということになり、私に依頼がきたのです。(p.116)
加藤は、鳥取、沖縄、アメリカと取材の旅をし、多くの人に会って話を聞き、
スタンレー自身の書いたものはもちろん、英文、和文の文献を数多く集め、さらに地方新聞の記事にまで目を通した。
そしてこれらの作業の中で、スタンレー・ベネットの人物の原点・基調には、
心の故郷鳥取と、幼い時に事故でなくなった弟のフレデリック、そして太平洋戦争の三つがあると考えて、彼の生涯を書き上げている。

先回少し触れたスタンレーの父、ヘンリーについて、加藤は二つの点で2冊の参考文献を挙げている。
・伊谷隆一「H・T・ベネット」(『近代百年鳥取百傑伝』山陰評論社1970年)
・松田章義「ヘンリー・J・ベネット―伝道と幼児教育―」(『郷土が誇る人物誌』鳥取県教育委員会編、第一法規出版 1990年)

前者のタイトルにあるベネットのミドルネームが「T」になっているが、後者の「J」が正しい。
後者は150名の人物を取り上げている。わたしも、この中の2名について執筆しているが、どの人物をだれが執筆したか、明らかにしないことになっていた。この場合は例外的措置だったのであろう。

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