昨日、堀正岳さんのサイトを訪れて、驚いた。田中菊雄『現代読書法』が紹介されていたからである。このサイトはときどき拝見していろいろ学習させていただいているが、若い人がこの本を取り上げていることに驚いたけれど、またうれしくもあった。
この本の内容については堀さんが丁寧、かつ的確に紹介されているから、ぜひそのサイトをご覧いただきたい。
http://lifehacking.jp/2009/10/book-reading-for-the-modern-age/
わたしは、これに便乗して、思い出話をさせていただく。
さっそく本棚から田中先生の著書を抜き出してみたら、下記の6冊があった。
『現代讀書法 現代人は如何に讀むべきか』柁谷書院 昭和17年1月
『現代読書法』三笠書房 1961年5月
『英語学習法』研究社 昭和33年8月
『英語研究者のために』講談社学術文庫 1992年1月
『知的人生に贈る どう生きるかを考える書』三笠書房 1983年7月
『岩波英和辞典 新版』岩波書店 1958年3月
(*この辞典は、島村盛助・土居光知・田中菊雄の共著となっているが、田中の血と汗の結晶である。)
最初に挙げた『現代読書法』の裏表紙見返しの遊び紙に次のようにペン書きしている。
以前に、戦後版を購入していたが、四月の火事(注:1952年4月17日の 鳥取大火)で焼失してしまった。それを今日、増田古書店で買った。この書物には多大の利益を得た。本を読んで書き入れや、抄録をするようになったのも此の書の影響である。書中に引用せられている多くの書籍は、自分にとって極めて有益な良書紹介であった。新渡戸先生の著書を知り、読み、先生を崇拝するようになったのも、この書及び、同著者の「私の人生探求」の御陰である。この書が再び自分の書棚に収まることとなったのは嬉しい。(昭和27年6月29日)
上記書込みにもあるように、新渡戸稲造の『修養』を県立図書館から借りだして読み、感銘を受けた。この本をどうしても自分の書棚に置きたいと思った。しかし、明治44年の発行だから、古書店でも入手は難しかろうと、筆写することを決心した。新制中学3年生の秋、1948年9月12日の日記にその決意を記している。
図書館の本の帯出期間は限定されているから、3人の親友にも頼んで代わる代わる帯出してもらい、筆写を続けた。その後、親友の一人が自宅の蔵にあったと言ってきて、この本を借りっぱなしにすることができた。「大正五年十月一日縮刷五十一版」の小型本だった。
翌年「昭和二十五年十二月二十二日午後七時」筆写完了。
B4の罫紙の両面に朱色の縦罫が14行書きできるように引かれた用紙に、ガラスペンとインクで筆写した。ちょうど罫紙300枚、600ページだった。年の暮れではあったが、27日に、製本屋の主人が「感心した」と言って、わざわざ届けてくれた。「修 養 新渡戸稲造著」と背文字も刻されていた。2年後の大火の際も、これだけはという思いで持ち出した本の一冊として現在も書棚にある。
もちろん現在では、教文館の新渡戸稲造全集もあるし、タチバナ教養文庫の一冊として『修養』も容易に入手できる。
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